自家製「<注意>本ボードは抜かないで下さい」ボードの製作 |
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1 動 機
2002年から2003年にかけて、PC-9821Ra266およびPC-9821Xa200/W等を入手しました。早速、使用してみたのですが、どうもグラフィック表示が遅く感じられます。私は、パソコンをゲーム以外の用途に使用していますので、3Dや高速の描画は必要ありません。しかし、元々使用されているTGUI9682ではあまりにも遅過ぎます。別のグラフィックボードを使用すれば、表示は高速化されますが、貴重なPCIスロットを消費してしまうことになります。
この解決策として、PCIスロットの増設があります。この方法では、マザーボードに手を入れる必要があるのと、一定の技術と技能が必要となります。
種々検討した結果、ある程度高速に描画できる「<自家製>本ボードは抜かないで下さい」ボードを作り、いわゆる「<注意>本ボードは抜かないで下さい」ボード(以下、「抜いちゃダメボード」という。)専用疑似PCIスロットに挿して使用することにしました。
具体的にはPC-9821V200/Sに使用されている1064SG搭載のグラフィックボードG8XZT_A5Aを単体で入手したので、これを用いて「<自家製>本ボードは抜かないで下さい」ボード(以下、「自家製ボード」という。)を作ってみました。
これは、任意のグラフィックボードで抜いちゃダメボードを作るための予備実験でもあります。
2 事前検討
自家製抜いちゃダメボード製作に当たって、PC-9821シリーズの専用抜いちゃダメボードを調査・分析すると次のようになりました。
- 専用抜いちゃダメボードは、PCI規格スロットとほぼ同様の電気的、外形的規格とし、その予約ピンを利用して通常のPCIバス用信号以外の信号を入出力している。また、通常のPCIスロットへの誤挿し込み防止のため、PCIスロット取付金具下部の挿し込み部は、通常のPCIスロットの10〜10.6mmよりも幅が広く13.0mmとなっている。
- 専用抜いちゃダメボードのうち、98DOS表示回路付きボード(G8WMP、G8YDR、G8YKJ等)では、PCI規格の予約ピンを利用して抜かないでボード上のSRAMへの電源供給および書き込み制御、DOS表示回路制御(?)、14.3MHzクロック入力を行っている。そして、98DOS表示回路出力、ボード上のグラフィックチップ出力、他のグラフィックボードからの入力のうちの一つをドライバーにより選択してボードのモニター出力端子に出力するようになっている。
- 専用抜いちゃダメボードのうち、98DOS表示回路のないボード(G8XZT,G8YWB等)では、これらの予約ピンを利用してグラフィック表示のRGB信号出力、水平同期信号出力、垂直同期信号出力、14.3MHzクロック入力、DCI(Display Controll Interface)信号出力(?)を行っている。そして、マザーボード上で98DOS表示回路出力、専用抜いちゃダメボード出力、他のグラフィックボードからの出力のうちの一つをドライバーにより選択し、マザーボード上のモニター端子に出力するようになっている。
- 抜かないでボードは、
@ 予約ピンを通じて各種信号を入出力している。
A 固定金具下部の差し込み部の幅が一般のPCIボードのそれよりも幅が広いことから、マザーボード側のPCIソケットに完全に奥まで挿し込めない。
の2点から、通常のPCIソケットで使用することはできない。
- マザーボード側の専用抜いちゃダメボード用疑似PCIスロットの予約端子には、前述のボードに対応して、通常のPCI信号以外の信号が流れており、ここに一般のPCIボードを挿すことは基本的にはできない。ただし、予約端子に何も接続されていないPCIボードは、98DOS表示回路のないボード(G8XZT,G8YWB等)の代わりに挿して使用できる場合がある。
- 専用抜いちゃダメボードに採用されたグラフィックチップ用のドライバーは、DOS表示回路とグラフィックアクセラレータ回路の切り換えを考慮して作成されている。
3 改造の進め方
上記を基に総合的に検討した結果、M/BがG8YKKやG8YEW,G8WSGであるため、
@DOS表示回路としてG8WMPを使用する。
AG8WMPの外部RGB信号入出力回路は従来どおりの機能で使えるようにする。
(別のグラフィックボードをPCIスロットに取り付けて使用できるようにしたいため。)
BG8WMPでのDOS表示回路との切り換えがソフトウェア的に問題無く行えるようにする。
ということから、上記の条件を満たすG8XZT(1064SGを搭載し、厚さが薄く実装が容易)とG8WMPと組み合わせて自家製ボードを製作することにします。
なお、このような方法を用いてPC-9821でDOS表示回路とグラフィックアクセラレーター回路の切り換えがソフトウェア的に問題なく行えるのは、TGUI9680、TGUI9682、TGUI9685、MGA-1064SG、GD5446など、9821シリーズの内蔵グラフィックチップとしてμPD95177GNと組み合わせて使用されていたものとその同等品に限ります。
どうしてもこれら以外のグラフィックチップ(例えばMGA-2064W)を使いたいということであれば、抜いちゃダメボード上の高速アナログスイッチ、ゲートIC、μPD95177GNの関係配線をつなぎ変えることにより実現できます。ただし、この場合は、他のPCIグラフィックボードからの出力を自家製抜いちゃダメボード上で適切に切り換えられなくなります。
さて、具体的には、下記のステップごとに進めました。
- TGUI9682の動作停止。
G8WMP上のTGUI9682へのクロック供給を停止し、その動作を止める。本当に止まったかどうかを確認するには、プルアップ抵抗を接続し、動作を見る。
予備実験として、
@バスマスタ関係配線がM/B上のPCIコネクター1,2に接続されていることを確認する。
APCIスロットにG8XZTを取り付け、G8WMPのA09ピンから14.3MHzクロックをG8XZTのA19ピンに供給し、動作することを確認する。
といったことを行いました。
- グラフィックボードの固定
G8XZTは、取り付け位置を検討した結果、抜かないでボードとCバス枠の間の隙間に納めることとしました。具体的には、G8WMPはそのまま疑似PCIスロットに挿し込み、G8XZTはG8WMPにビス、ナット、自作金具で共締めします。この2枚のボードは、PCIスロット固定金具のビス穴位置が全く同じであるため、共締めが可能です。しかし、せっかく共締めできるのに、マザーボード側のコネクター部金属板やフレームに当たってしまい、直接共締めできません。
そこで、AC100V用平行プラグに使用されている金具部分を加工して使用します。金具の差し込み部には3.2mmの穴が開いており、反対側には電線を接続するため、3.5mmのタップ穴が開いています。この二つの穴部分が段違いとなるよう曲げます。段違いの度合いによりプリント板の間隔が決まりますので、G8XZTの厚みに応じて今回は4.0mmとしました。また、プラグ金具の電線接続部で不要な部分は切断します。
つぎは、プリント板の固定です。AC100Vプラグ用金具の3.2mm穴は、G8WMP側でプリント板及びPCI金具と共締めします。反対側の3.5mmタップ穴側は、PCI金具を外したG8XZTのプリント板を取り付けます。なお、G8XZTのPCI金具取付穴は少し広げる必要があります。
- 電気配線
前項のような固定方法ですと、G8XZTには電気信号が全く入出力されませんので、0.26mmの耐熱電線で2枚のボード間を接続します。まず、PCIエッジコネクタ部のパターン穴相互間を接続します。予約端子以外の同じ端子番号同士を接続しますが、一部の端子は使用されていませんので省略します。また、G8XZTの一部端子は、エッジ部にパターン穴が無いため、1064SGの裏で接続します。
さらにG8XZTの予約ピンに割り当てられているRGB信号については、G8WMP内のアナログスイッチICやゲートICを足上げし、G8XZTからのRGB信号、H-SYNC信号,V-SYNC信号を接続します。
以上の配線作業は単調で、かなりの時間がかかります。導通チェックをしながら慎重に配線します。なお、配線に当たって2枚のボードは、PCIエッジ端子同士を向き合わせ、スペーサーを使用して仮固定しておきます。そうしないと配線接続中にボードを動かすたびに配線が曲げられ、断線してしまいます。
そして、1〜2本接続するごとに根元をメルトガンで溶かしたポリエチレン樹脂で固定していきます。メルトガンが無いときは半田ごて使用します。ただし、多少焦げてしまいます。メルトガンは、ホームセンターや日曜大工用品店で2000円程度以下で入手できます。
配線を固定しながら行わないと配線作業中に電線がプリント板接続部で折れてしまい、いつまで経っても全ての配線が完了できません。
- 注意が必要な配線
ボード間配線のうち、注意が必要な個所がいくつかあります。
@ +3.3V端子
注意が必要なものの一つがG8WMPの+3.3V端子です。もともとG8WMPでは+3.3Vが使用されていないので、ここからG8XZT用の+3.3Vを取り出さなくてはなりません。G8WMPのPCIエッジコネクター部の部品側0.3mm程度に耐熱電線を半田づけし、G8XZTの+3.3Vと接続します。半田付けに当たっては、エッジコネクター部全体に半田が回ってしまわないよう、紙テープなどでマスキングします。
A G8WMP内のICの足上げ配線
G8XZTを使って描画するため、G8WMP上のTGUI9682からのRGB信号、水平同期信号出力、垂直同期信号出力をG8WMP上のアナログスイッチやゲートICから切り離し、代わりにG8XZT出力のRGB信号、水平同期信号出力信号、垂直同期信号出力信号を入力します。これには、G8WMP内のICの足上げ配線をします。
足上げは、先を0.5mmほど曲げた待ち針を、足上げしたいICのピンの裏に差し込みます。そして、半田を拭き取った半田鏝でピンが接続されているパターンを加熱します。ピンが足上げされるよう待ち針をてこのように動かします。
待ち針はできるだけ先の細いものを選びます。半田鏝の半田を取るには、濡らした布または濡らした専用のスポンジに鏝先をこすりつけます。半田鏝の半田を十分拭き取っておかないと加熱時に余分な半田でICのピン間をショートさせてしまいます。もし、短絡させてしまった場合は、半田吸い取り線を当てて加熱し、余分な半田を吸い取ります。
つぎに両端を被覆剥きした極細耐熱電線を、引き回したい位置にメルトガンで溶かしたポリエチレン系接着剤で数カ所固定します。足上げとは反対側の電線を先に半田付けします。つぎに足上げ部分の半田付けをします。半田付け後は導通テスターで隣接するICのピンやパターンとショートしていないことを確認します。
4 試験
全ての配線が終わった時点で再度誤配線が無いかどうか確認します。誤配線があるとマザーボードを破損することがありますので慎重に確認します。
つぎに、G8XZTとG8WMPを2枚重ねで共締めしなおします。このとき、たくさんの配線がクッションの役割をするため、プリント板のPCIスロット固定金具から遠い方は、特にスペーサーを使わなくても間隔が維持されます。
いよいよ通電試験です。最初からWindowsを立ち上げることはせず、まずDOSをFDで立ち上げます。いつでも電源を切れる状態でスイッチを入れます。異常な発熱、発煙、異臭がないことが確認できれば、今度は改めてWindowsで再起動します。
誤配線がなければ、ボードが認識され、ドライバーが自動的に読み込まれるはずです。
5 補足
- 「<自家製>本ボードは抜かないで下さい」ボードの材料
上記に示した方法で「<自家製>本ボードは抜かないで下さい」ボードにできるのは、PC-9821シリーズで内蔵グラフィックチップとして採用されたMGA-1064SG、CL-GD5446、TGUI9682などを使用したグラフィックボードに限ります。このうちTGUI9682では、抜かないでボードが容易に手に入り速度も遅いので、自家製ボードを作るのは意味がありません。
条件を満たすグラフィックボードとしてはMystiqueもありますが、プリント板が大きく厚みがあるため実装が困難です。どうしてもという場合は、MystiqueのVGAコネクタやジャンパーピンなどを取り外す必要があります。
なお、1046SG-Dを使用したG8YDRが入手できて、改造せずこちらをそのまま使えるとよいのですが、G8YKK等では動作しません。もっとも、G8YDR自体は単体で販売されているのはほとんど見たことがありません。
Milleniumは2Dに限れば高速で画質もよく、PCI金具のプリント板固定ビス穴の位置がG8WMPと同じなので製作したくなりますが、DOS画面からの切り換えがうまくいかず、Windows画面が真っ暗となります。これを防止するにはμPD95177GNからの切り換え信号を入れ換えて接続すればよいのですが、今度はPCIスロットに他のグラフィックボードを搭載し、その出力を自家製ボードで98DOS切り換えできなくなります。この場合、外部の切り換えスイッチを使用すれば表示は可能です。また、MilleniumはMystiqueと同様プリント板が大きく厚みがあるため、実装が困難でVGAコネクタやジャンパーピンを外す必要があります。
6 工作の難易度
工作の難易度としては、PCIスロットの増設よりも困難です。単純に電線を接続していくと、作業中に接続済みの電線が折れていくため、電線の物理的固定は必須です。メルトガンとポリエチレン系樹脂を使い、電線をプリント板に固定するとすぐに固まるため作業性が向上します。ゴム系接着剤では固まるまで時間がかかるため、適していません。
電線は単線の極細耐熱電線しか使えません。極めて狭いところて半田付けを行うため、耐熱電線は必須です。
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