VUメーターとドライブICの研究
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2022. 6.26 Ver. 1. 0 公開初版

1 はじめに
 過去にVUメーターを始め各種ICも入手していたのですが、使用することも無く保管していました。そろそろ、使おうとして調査をし、予備実験もしました。
 その結果、下記が判明しました。
(1) LINEの電圧レベルを監視するのであれば、線形増幅回路と本来のVUメーターを組み合わせればよい。
(2) スピーカー出力に応じて正確にメーター指針を振らせたい場合は、専用のICと専用の目盛のメーターを組み合わせなければならない。
(3) インターネット上のショップで入手できるレベルメーターにはでたらめな目盛のものが少なくない。
(4) VUメーターやドライブ基板が単独あるいは組み合わせて販売されているが、必ずしも正確なレベル表示とはならない。
(5) 高価ではあるが、業務用のものは正しく使用すれば、正しい表示となる。
 目算違いで無駄な出費をすることの無いよう、下記情報を参考にしていただければ幸いです。

2 VUメーターについて
 まず、本来のVUメーターとそれに類似したメーターについては下記があります。このほかにもピークプログラムメーターやレベルメーターがあります。
項  目 交流で動作する本来のVUメーター VU目盛の直流メーター W(ワット)目盛の直流メーター dB目盛のある計測器用直流メーター
1A 外観例1

枡目は10mm方眼
大きさは87×63mmで、いわゆるR55タイプです。R45,R55,R65の3つの大きさがありました。


円筒部直径は55mmです。
照明ランプ内蔵です。
大きさは40×40mm、窓部分は21.5×36.5mm
カセットデッキ用でした。


別のランプによる背照式です。

大きさは70×70mm、窓部分は63×40mm、8Ω負荷、100W出力アンプ用です。


照明ランプ内蔵です。

幅100mm以上あります。計測器のミリボルトメーターに使用されていました。黒い曲線部は読み取り誤差を防ぐためのミラーです。

円筒部直径は60mm以上あります。
内蔵照明はありません。

1B 外観例2

枡目は10mm方眼
大きさは42.5W×42.5Hです。業務用放送機器に使用されていました。

円筒部は直径38mmです。

指針が天地逆のタイプもあります。カセットデッキ等に使用されていました。

円筒部は38mmです。

2 概  要  放送機器や高級オーディオ機器用で600ΩLINE信号レベルを監視するためのメーター。
 
1kHzで0.775Vの信号電圧に対する信号電圧の相対値をdB目盛で表示する。指針の動作速度も規定されている。
 メーターに直列に抵抗3.6kΩを接続し、(1)600ΩLINE信号に接続したとき、または(2)インピーダンスが300Ωの電圧信号源に接続したときのみ、正常な値が表示される。
 VU目盛を施した直流電流計であり、業務用及び民生用オーディオ機器に使用されるメーター。
 信号電圧の大きさを表示する。
 本来のVUメーターと同等の動作をするよう、メーターを駆動する電子回路側で、指針の動作速度を補正したものもある。
 電力の単位であるW(ワット)目盛を施した直流電流計であり、高級オーディオ機器や業務用アンプに使用されるメーター。
 スピーカーへの出力電力の大きさを表示する。
 負荷インピーダンスが異なると正しく表示されない。
 各種計測器用に使用されるメーター。交流ミリボルトメーター用が多い。多くは電圧レベルを表示する。
3 特  徴  dB目盛と%目盛とがある。%目盛がなく、dB目盛のみのものもある。
 メーター内部に整流回路を内蔵しており、
信号用端子に+−の極性が無い。(ただし、上の画像のように、極性のあるメーターの筐体を流用している場合は、極性表示がある。) 
 dB目盛のみが多い。
 メーターは直流電流計で、
信号用端子には+−の極性がある。
 0.1W程度からから最大出力程度までの範囲のW(ワット)目盛がある。
 メーターは直流電流計で、
信号用端子には+−の極性がある。
 dB目盛のみまたはdB目盛と電圧目盛等が併記されている。電圧目盛等の最大値は1、1.5、3、5のことが多い。%目盛は無いことがほとんど。
 メーターは直流電流計で、
信号用端子には+−の極性がある。
4 目  盛
(代表例)
dB目盛:-20,-10,-7,-5,-3,-2,-1,0,1,2,3
%目盛:0,20,40,60,80,100
0dB以上は
赤色目盛

指針は、100%と0dB、80%と-2dB、50%と-6dB、10%と-20dBを同時に指す。
dB目盛:-20,-10,-7,-5,-3,-2,-1,0,1,2,3
%目盛:0,20,40,60,80,100
0dB以上は赤色
目盛
%目盛がなく、dB目盛のみのものもある。
指針は、100%と0dB、80%と-2dB、50%と-6dB、10%と-20dBを同時に指す。
dB目盛:-40,-30,-20,-10,0,+3
W目盛:0.01,0.1,1,10,100(一例であり、最大出力まで目盛られていることが普通。)
dB目盛が10増えるごとにW目盛数値は×10倍となる。
例えば、最大出力が100Wの場合、指針は、100Wと0dB、10Wと-10dB、1Wと-20dB、0.1Wと-30dB、0.01Wと-40dBを同時に指す。
dB目盛:-20,-10,-7,-5,-3,-2,-1,0,1,2,3
目盛:0-100,0-150,0-300,0-500等
w針は0dBと0.775Vを同時に指す。まれに、0dBと1.00Vを同時に指すものもある
5 目 盛 板 薄黄色(規格で色が規定されている。) 薄黄色、ブルー系、グリーン系 薄黄色、ブルー系、グリーン系 薄黄色や白色
6 指  針 先端はスペード型や針状 先端は針状 先端は針状 先端は針状
7 メーター端子の極性 信号用端子には極性が無い。
ケースを流用しているため、プラスの表示があることもあるが、電気的には無極性。
信号用端子には+−の極性がある。 信号用端子には+−の極性がある。 信号用端子には+−の極性がある。
8 メーターの照明  照明用のランプ端子があることが多い。  照明用のランプ端子や背照できる構造のものがほとんど  照明用のランプ端子があることがほとんど。  照明用のランプ端子があるものは少ない。
9 外  形  外形は比較的大きく、しっかりしている。  外形は透明プラスチックであることがほとんど。
 外形は透明プラスチックが多い。2回路分を上下または左右に配置して1つのケースに入れたものもある。  外形は比較的大きく、しっかりしている。
回転中心を同一とした2指針のものもある。
10 メーカー SIFAM、YAMAKI、日置、西澤等
日置や西澤は生産中止して久しい。
メーカー名無し、又は各社(YAMAKI、日置以外)  メーターのメーカー名が記載されていることはまず無い。 日置、横河等(YAMAKI以外)
11 入 手 性  現在も生産されているので、デザインや価格を問わなければ入手は容易。ただし、かなり高価。  新品や中古の流通在庫が多く入手は容易であるが、安っぽいデザインのものが多い。  中古であれば、入手可能であるが、最大目盛は選べない。新古品はめったに出ない。
 
でたらめな目盛のものが少なくない
 個人では新品はほぼ入手不可能であるが、中古は可能。
12 価  格 新品:5000円/個以上
中古:1000円/個以上
新品:1000円/個以上
中古:300円/個以上
新品:新古品であれば可能
中古:500〜2000円/個
新品:まず、入手不可能。新古品であれば可能。
中古:1000〜3000円/個


3 メータードライブICについて
 
まず、代表的なメータードライブICについては下記があります。各種OPアンプ等は元々汎用であり、VUメーターなど用途に合わせて電子回路を設計します。民生用機器などで、広い範囲の電圧や電力を感度切換することなく表示するため、右側の3つのICが開発されました。これらについては、データシートはインターネット上にありますが、入手は少し難しいでしょう。
項目 \ 区分 P Q R S
1 IC形式
ある程度高速のOPアンプ

TA7318P

TA7332P

BA6138
2 メーカー 各社 東芝 東芝 ROHM
3 製  造 生産中 生産終了し流通在庫のみ 生産終了し流通在庫のみ 生産終了し流通在庫のみ
4 入 手 性 容易 極めて困難 かなり困難 容易
5 参考価格 30〜1500円 1000〜1500円 300〜1000円 200〜1000円
6 入出力特性 リニア(交流入力電圧に比例した出力) AC入力電圧の4乗根に比例したDC出力 AC入力電圧の平方根に比例したDC出力 AC入力電圧の平方根に比例したDC出力
7 用  途 汎用 専用WATT目盛の直流電流計用 入出力特性を考慮したdB目盛の直流電流計用 入出力特性を考慮したdB目盛の直流電流計用
8 特記枕 時定数、ピークホールドなど設計次第で表示内容を自由に設定可能 定数設定可能 定数設定可能 定数設定可能
指針のミューティング回路内蔵
 
4 組み合わせの基本
 何をしたいかにより、メーターとそのドライブ回路の構成が変わります。間違った組み合わせであると正しい表示は全く期待できません。右側3つのICは、IC特性に合わせた目盛のあるメーターと組み合わせて使用して初めて正しい表示が行われます。アクセサリとして使用する程度なら、通常のVUメーターと組み合わせればよいでしょう。
メーター\IC素子 ドライブ回路主要素子
各種OPアンプ等 TA7318P TA7332P BA6138
1 本来のVUメーター 信号回路のインピーダンスを考慮して設計すれば正しく動作する。 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。
2 VU目盛の直流メーター 目盛に合わせた整流回路を組み込めば正確に表ヲ可能。 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。
3 W目盛の直流メーター 目盛に合わせた整流回路と補正回路を組み込めば正確に表示可能。 正確に表示可能 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。 平に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。
4 dB目盛のある計測器用直流メーター 適切な電子回路と組み合わせれば、入力電圧を調整するだけで、電圧レベルを正確に表示可能 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。 単に指針を振らせるだけなら動作するが、精度は全くない。
正確に表示させる方法 メーター目盛に合わせて適切に設計された電子回路でメーターを駆動する。 0.01W,0.1W,1W,10W,100Wなど、10倍刻みの電力目盛が等間隔にある専用目盛のメーターと組み合わせる。 -50dB,-40dB,-30dB,-20dB,-10dB,0dB,10dBなど、10dB刻みのレベル目盛が等間隔にある専用目盛のメーターと組み合わせる。 -50dB,-40dB,-30dB,-20dB,-10dB,0dB,10dBなど、10dB刻みのレベル目盛が等間隔にある専用目盛のメーターと組み合わせる。

5 特記事項
(1) 本来のVUメーターでLINE信号のレベルを指示したい場合。
   → 入力信号をリニアに増幅し、600Ω伝送ラインに3.6kΩの直列抵抗を介してVUメーターを接続する。
(2) 本来のVUメーターでスピーカー出力を指示したい。
   → 正確な表示はできず、もっともらしく指針が振れるだけです。また、感度調整のための抵抗器や増幅器が必要。
(3) VU目盛の直流メーターで、LINE信号のレベルを指示したい。
   → メータードライブ回路を適切に設計することにより、正確に指針を振れさせることが可能
(4) VU目盛の直流メーターで、スピーカー出力を指示したい。
   → 
正確な表示はできず、もっともらしく指針が振れるだけです。また、感度調整のための抵抗器や増幅器が必要。
(5) W目盛の直流メーターで、スピーカー出力を指示したい。
   → 電子回路による補正を行えば可能。
(6) dB目盛のある直流メーターで、
LINE信号のレベルを指示したい。
   → 電子回路による補正は必須
(7) dB目盛のある直流メーターで、スピーカー出力を指示したい。

   → 電子回路による補正は必須

(8) 
TA7318P VUメータードライバーサーキットボード」などと称してメーターを駆動するプリント回路板が多数ネット上で販売されていますが、99%はBA6138または一般的なOPアンプを使用した回路となっています。プリント回路板の画像を見ると、黒いIC(集積回路)が写っていますが、その外形は少なくともTA7318Pではありません。実際に購入したところ、BA6138でした。これはTA7318Pがかつて有名であったため、セールス上適当に記載しているだけだと思われます。よって、LINE信号を見るアクセサリー的用途ならこのようなメータードライブ用プリント回路板を使用してもよいですが、スピーカー出力端子の電力を測定したいなら、全く使用できません。また、最近のデジタルアンプの出力や一部のBTL出力アンプのマイナススピーカー端子は接地電位ではないため、このようなメータードライブ回路板を接続するとアンプ側が破損します。
(9) VUメーター搭載の日本製VUメーター装置は高価(数万円以上)ですが、LINE信号電圧を表示するならある程度正確に表示させることが可能です。

6 おわりに
 インターネット通販では、いろいろなタイプのVUメーターやWメーター、メータードライブ用プリント回路板が入手できます。本来の正しい表示をさせたいなら、十分調査の上、購入することが重要です。


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