PC-9821のグラフィックスの仕組
アクセスカウンター

[PC-9821とグラフィックスに戻る]  [トップページに戻る]

2021. 9.20 Ver. 1. 5 カウンタ再開
2010.11. 8 Ver. 1. 4 カウンタ廃止
2004. 2.23 Ver. 1. 3 文章追加
2003. 9. 8 Ver. 1. 2 誤記修正(単なる誤字修正です。)
2003. 7. 7 Ver. 1. 1 G8YKJのデータとμPD95177GN、μPD97030GN002動作説明追加
2003. 6.30 Ver. 1. 0 初版公開
はじめに
 PC-9821シリーズでは、2とおりのビデオボードを切り換えて使用できます。これは、画像出力回路を専用ICで切り換えているからです。以下、調査した結果を解説します。

1 グラフィック回路の基本
 PC-9821ではPCIバスにDOS描画回路、画面切換回路、内蔵グラフィック回路、後付のPCIビデオボード回路が接続されています。ただし、その実装の仕方は機種によって
異なります。
 代表的なものを挙げるとグラフィック回路は次のようになっています。

(1) PC-9821Xa13/W16やPC-9821Ra266/W30R
 これらの機種では、DOS描画回路、画面切換回路、内蔵グラフィック回路がG8WMPまたはG8YKJという「<注意>本ボードは抜かないでください」ボードに実装されています。また、DOS描画回路、画面切換回路はμPD95177GN(G8WMPの場合)またはμPD97030GN002(G8YKJの場合)というLSI にまとめられています。
 起動時には、DOS回路が動作し、μPD95177GN(以下、( )内はμPD97030GN002の場合です。)の3pin.158pin.159pin(7pin,8pin,6pin)のうち158pin(8pin)だけがLレベルとなり、DOS描画回路出力を切換用ICを経由してCRTに出力します(
図中、青線部分)。
 その後、WINDOWSが起動して、内蔵グラフィックチップ(TGUI9682)を使用する設定となっていた場合は、μPD95177GNの159pin(μPD97030GN002の6pin)だけがLレベルとなり、内蔵グラフィックチップ出力が切換用ICを経由してCRTへ接続されます(
図中、緑線部分)。
 また、PCIバスにビデオボードを取り付けてあって、そのボードを使用する設定となっている場合は、μPD95177GNの3pin(μPD97030GN002の7pin)のみがLレベルとなってビデオボードからの出力のみを切換用ICを経由してCRT回路に接続します(
図中、赤線部分)。
 いずれの場合も、適切な接続状態となるようドライバソフトが画像切換制御回路を制御します。
 なお、「<注意>本ボードは抜かないでください」ボードには、DOS描画回路に加えて入出力やFDD起動など各種設定を記憶するS-RAMが搭載されており、実際に抜くとリチウム電池からの電源が絶たたれてしまうため、「<注意>本ボードは抜かないでください」と書かれたシールが貼ってあります。抜いてもハード的に破損することはありませんが、改めて全ての設定をやり直す必要が生じます。


(2) PC-9821Xa7,Xa9,Xa10等
 これらの機種では、DOS描画回路、画面切換回路、内蔵グラフィック回路をマザーボード上に実装しています。切換動作は(1)と同様です。

(3) PC-9821V166/S,V200/S7等
 これらの機種では、DOS描画回路、画面切換回路をマザーボード上に実装しています。内蔵グラフィック回路は専用のボード(G8XZTやG8YWB)上に実装し、RGB信号、H-SYNC、V-SYNC信号はPCIコネクタの未定義端子を利用してマザーボード上の切換回路に接続しています。
 従って、専用ボード用のコネクタを利用して、内蔵グラフィックボードの代わりに一般的なビデオボードを使用することができます。
 信号の切換は、(1)の場合と同様です。


(4) μPD95177GN μPD97030GN002の動作

 これらのLSIは前述のとおり、DOS描画とグラフィック出力の切換を行います。OSが選択したグラフィックモードに応じて切換出力端子のいずれかをLレベルにします。下表にこれらのLSIの出力pinの動作を示します。 
  μPD95177GN μPD97030GN002
158 159 3 8 6 7
選択した
グラフィック
98DOS L H H L H H
内蔵グラフィックス H L H H L H
RGB-IN H H L H H L

2 特徴的な事象
 PC-9821シリーズでは、ビデオボードを挿す位置や搭載グラフィックチップの種類によって様々な現象が起きます。以下、その概要を説明します。

(1) MystiqueをPC-9821シリーズで使用した場合
 かつては、高速なグラフィックボードを求めて、MATROX社製のMystiqueをPC-9821シリーズで使用することが行われました。

 この場合、Mystiqueからの信号を本体のVGA_INに接続すると、Windowsが立ち上がった時点で画面が真っ暗になり、描画されません。このとき、Mystiqueから直接CRTへ接続するとWindows画面が正常に描画されます。雑誌では「DOS画面の切換がうまくいかない」などと紹介していました。
 これは、実は当たり前のことなのです。なぜならば、NECが内蔵グラフィックチップとして採用したTGUI9682、1064SG、GD5446などのドライバは、Windowsで描画するときにμPD95177GNの159pinのみをLレベルにして内蔵グラフィックチップ出力をCRTに接続するようになっているからです。これら以外のグラフィックチップでは、μPD95177GNの3pinのみをLレベルにしてPCIスロットに追加したビデオボード出力をCRTに出力します。
 上図で言うと、Mystiqueをグラフィックアダプタとして選択した場合、PC-9821用ドライバはμPD95177GNの159pinをLレベルにします。従って、Mystique出力は切換用ICのところまではきていますが、選択されないので、CRTには出力されません。また、この状態では、TGUI9682の出力はCRTと接続されているのですが、グラフィックチップとして選択されていませんので、描画動作はしません。この結果、画面は真っ暗のままとなるのです。


(2) IO-DATA製GA-DR98やGA-DRX/PCIを使用した場合

 これらのボードでは、PC-9821Xa7等に使用されているのと同じビデオチップであるTGUI-9682やTGUI9680を使用しています。これらのボードでは専用のドライバが添付されており、Windowsで描画する際は、μPD95177GNの3pinをLレベルとするよう設定されています。よって、内蔵グラフィックチップと同じチップを使っているにもかかわらず、PCIスロットに挿したGA-DR98/GA-DRX/PCI出力がCRTへ出力されるのです。

[このページのトップに戻る]  [PC-9821とグラフィックスに戻る]  [トップページに戻る]