１ はじめに SONY製品に使用されている1T264というダイオードがあります。1T264は1T243と同様、主としてツェナーダイオードとして使用されているようですが、SONY製品のサービスマニュアル記載のツェナー電圧実測値は、使用機器や使用場所によって異なることがしばしばあります。また、ツェナーダイオードのように逆方向ではなく、順方向に使用されていることもあります。さらには、このダイオードの外形もTO-92で3本脚のものや2本脚のものもあります。このため、オーディオマニアやラジオ修繕マニアがSONY製品を修理する際、どのようなダイオードで代替するかで困惑しています。 このようになってしまった原因は、下記によります。 (1) 実は、1T264はNPNタイプのバイポーラトランジスタそのものであり、SONYは、そのE-B間をダイオードとしてSONY製品に使用している。 元となったトランジスタは2SC631-634のようである。 (2) 1T264には特性の異なる複数の形式があり、それぞれ1T264-***(***は英数字などの文字)という1T264から始まる形式番号を付与している。 形式番号は、トランジスタを転用したダイオードを意味するらしい2T2と元のトランジスタ2SC631-634の形式番号の100位と10位の数字を組み合わせたものである。 (3) ダイオードとしての用途は、1種類ではなく、***で示される形式ごとに異なっており、ツェナーダイオード、バリキャップ等がある。 (4) ツェナーダイオードとして使用されている1T264には複数種類あり、それぞれツェナー電圧が異なる。 (5) SONY製品のサービスマニュアルでは***で示される細別区分番号を表示していないため、***部分の数字が異なった1T264-***で代替すると回路が正常動作しない。 (6) SONYのサービスマニュアルで記載されている標準電圧は、製品の販売当時一般的であった20kΩ/Vの内部抵抗のテスターを使用して測定した場合を例示してある。よって、現代のデジタルマルチメータで電圧を測定すると、サービスマニュアル記載の電圧よりも高めの値となることが少なくない。 (7) ツェナーダイオードのツェナー電圧は個体差があり、公称値に対して±５％程度ばらついている。 (8) ツェナーダイオードのツェナー電圧は一定ではなく、電流によって若干変わる。定格よりも低い電流であると0.5V程度低いツェナー電圧となる。 今回、SONYの資料により、これらのダイオードの定格の一部、特にツェナーダイオードとして使用している場合のツェナー電圧が判りましたので、以下の表に示すことにします。 There are diodes called 1T264 used in SONY products. Like the 1T243, the 1T264 seems to be used mainly as a Zener diode, but the measured Zener voltage value described in the service manual of SONY products often differs depending on the equipment and location used. The outer shape of this diode is also TO-92 with three legs or two legs. For this reason, audiophiles and radio repair enthusiasts are confused about what type diode to replace when repairing SONY products. The causes of this happening are as follows. (1) Actually, 1T264 is an NPN type bipolar transistor itself, and SONY uses the terminals between Emitter and Base as a diode in SONY products. (2) There are multiple types of 1T264 with different characteristics, and each is given a type number starting with 1T264 called 1T264-*** (*** is a character such as alphanumeric characters). (3) The application as a diode is not one type, but differs depending on the type indicated by ***, such as Zener diode, switching, and varicap. (4) There are multiple types of 1T264 used as Zener diodes, each with a different Zener voltage. (5) Since the service manual for SONY products does not display the suffix number indicated by ***, the circuit will not operate normally if replaced with 1T264-***, which has a different number in the *** part. (6) The standard voltage described in the SONY service manual is an example of measurement using a tester with an internal resistance of 20 kΩ / V, which was common at the time of product sales. Therefore, when the voltage is measured with a modern digital multimeter, it is often higher than the voltage described in the service manual. (7) There are individual differences in the Zener voltage of the Zener diodes, and it varies by about ± 5% from the nominal value. (8) Zener voltage is not constant and changes slightly depending on the current. If the current is lower than the rating, the Zener voltage may be about 0.5V lower. This time, from the SONY documents, I found some of the ratings of these diodes, especially the Zener voltage when used as a Zener diode, so I will show them in the table below. ２ 1T264の定格
3 外形
4 おわりに 形式番号に加え、細別区分番号がないとツェナー電圧が特定できないのは不親切です。 ［電子部品博物館インデックスに戻る］ ［1T200番台ダイオードインデックスに戻る］ ［トップページに戻る］ |
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