16MB_SIMM_MEMORYの32MB化
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2021. 9.20 Ver. 1. 3 カウンタ再開
2010.11. 8 Ver. 1. 2 カウンタ廃止
2003. 7.14 Ver. 1. 1 PDの表修正。文章一部手直し。
2003. 7. 4 Ver. 1. 0 公開初版
1 動  機
 高速化と拡張が困難な古いPC-9821シリーズを使い続けていく際、メモリーのフル実装は最低限実施すべき事項と思います。しかし、新品の周辺機器メーカー製32MB_SIMMは異常に高く、とても購入する気が起きません。中古の安価な16MB_SIMMや不良SIMM/DIMMを数個入手できたので、これらを組み合わせ、16MB_SIMMを32MB_SIMMに改造して使うことにしました。

2 検  討
 SIMMにはPARITYやECCの有無、FPかEDOか、容量の大小等の種別があります。また、搭載チップの種類や数も様々です。
 今回は、改造のやり易さを考慮し、16MbitDRAMが8つついた16MB_SIMMを32MB化することにしました。DRAMは他のSIMMやDIMMから調達しました。
 以下、16MB_SIMMに16MbitDRAMを追加する場合についてその方法を示します。


3 具体的進め方
(1) 規格資料の入手
 SIMMにはPARITYの有無、ECCかどうか、FPかEDOか、容量の大小等があります。また、搭載チップの種類と数も様々です。このように多種多様のSIMMでも、原則としてJEDECの規格に基づいて作られています。そこで、JEDECのサイトからSIMMの規格を入手します。この資料には、SIMMの規格が詳細に示されており、各端子の定義や設定もここで判ります。
  http://www.jedec.org/
 なお、SIMMのなかには、一見JEDEC規格に見えて実際には一部異なった端子定義のものがあります。多分サーバー用や特定機種用と思われますが、マザーボードを破損することがあるため、破損したくないPC-9821にはテストであっても使わないようにします。このようなSIMMの例としては、チップ数が片面10個のものでアドレスバス端子の一部にデータ端子が接続されているものや、実際の容量は4MBであるが設定は2MBのものがありました。HP製のサーバー用やNEC製のG8QBNが該当します。

(2) DRAMの入手
 追加用のDRAMは単体のパーツとして入手してもよいのですが、中古のSIMM/DIMMから外したほうが安上がりです。今回は、SIMMや5VのDIMMから外しました。
 DRAMには外形、容量、FPかEDOか、リフレッシュタイム、アクセスタイムなどにより数多くの品種があります。必ず同一形式または同等品を組み合わせて使用します。
 なお、同種のDRAMが入手できない場合、FPとEDOを組み合わせ、FPとして使用できる場合があります。


(3) DRAMの取り外し
 DRAMをSIMM/DIMMのプリント基板から取り外すには、一般的な26PIN_DRAMチップ(実際のPIN数は24)の場合、中くらいのマイナスドライバーをDRAMとプリント基板の間に差し込み、てこの原理で外します。この方法では、プリント基板の銅箔が剥がれてしまい、基板そのものの再利用はできなくなります。しかし、各種の方法を試した結果、最も早く、最も安定して作業ができると思います。
 DRAMのリード線の半田付けを外すのに半田ごてを使う方法は、DRAMが密着して取り付けられている場合、こて先が半田付け部分に届かず適用不能ですし、DRAMの端子数が多いので全端子の半田を同時に溶かすこともできません。
 また、ガスこんろでプリント板全体を加熱し、一気に半田を溶かす方法もありますが、DRAMに対する熱的ストレスが大きいことが問題となります。
 総合的に見て、ドライバー方式が最もよいと思います。
 もし、どうしてもDRAMとプリント板の両方を再利用したい場合は、DRAMの片側のピン全部を同時に暖められるような特殊なこて先(DILタイプのIC用)を使い、マイナスドライバーで力を加えながら加熱することにより、きれいに外すことができます。ただし、一定の熟練が必要です。
 なお、取り外したDRAMはリード線が変形しているので、ピンセット等を使用して整形しておきます。

(4) DRAMの取付
 16MBタイプのSIMMの多くは片側に16MB分のDRAM取付スペースがあります。ここに、先程取り外したDRAMとバイパス用のチップコンデンサを半田付けしていきます。バイパス用のチップコンデンサは、DRAMの下に取り付けることが多いので、DRAMよりも先に取付けます。
 DRAMは一度半田付けをするとやり直しができないため、慎重に位置ぎめをして作業します。また、半田付けの際、DRAMの隣り合うPIN同士を半田付けしてしまった場合は、半田吸い取り編組線を使って余分な半田を吸い取ります。

(5) メモリー容量の設定
 SIMMには、メモリー容量、ECCかどうか、PARITYの有無、EDOかFPか、電源電圧、動作速度をマザーボード側に知らせる端子があります。ここを設定しないと全ての容量を認識させられません。
 基板の72ピン側の端にチップ抵抗の搭載スペース、または半田付けのランドがあるはずです。DRAMを増設した場合は、下記にしたがって端子を処理します。
 なお、32/64MB_SIMMで最上段は100nsとなっています。現実には50nsではないかと思いますが、JEDEC規格ではこうなっています。

 Sは端子を接地する。・は端子を開放する。
PIN 67 68 69 70 11 記 事
機能 PD1 PD2 PD3 PD4 PD5   
2MB 100ns S S  
2MB 80ns S  
2MB 70ns S  
2MB 60ns  

PIN 67 68 69 70 11 記 事
機能 PD1 PD2 PD3 PD4 PD5  
4MB 80ns S S S  
4MB 70ns S S S  
4MB 60ns S S  
4MB 50ns S S S S  

PIN 67 68 69 70 11 記 事
機能 PD1 PD2 PD3 PD4 PD5
8MB 80ns S S S   
8MB 70ns S S S  
8MB 60ns S S  
8MB 50ns S S S S   

PIN 67 68 69 70 11 記 事
機能 PD1 PD2 PD3 PD4 PD5
16MB 100ns S S S  
16MB 80ns S S  
16MB 70ns S S  
16MB 60ns S  

PIN 67 68 69 70 11 記 事
機能 PD1 PD2 PD3 PD4 PD5
32MB 100ns S S S  
32MB 80ns S S  
32MB 70ns S S  
32MB 60ns S   

PIN 67 68 69 70 11 記 事
機能 PD1 PD2 PD3 PD4 PD5
64MB 100ns S S S S  
64MB 80ns S S S   
64MB 70ns S S S   
64MB 60ns S S  
 
(6) メモリーのテスト
 作業が完了したら、まず目視チェックをします。半田付けの不良や短絡を確認し、手直しをしていきます。
 つぎはテスターの導通モードやブザーモードで端子間の導通・非導通・短絡をチェックします。特にDRAMの電源端子と基板間の導通、DATA端子やADDRESS端子と他との短絡については、念入りに行ないます。もし、DRAMの電源端子が接地していると短絡電流によりSIMMやSIMMソケットを焼損します。また、各端子間の短絡はマザーボード側の破損につながります。
 チェックが終われば、いよいよ通電テストです。できれば、万一に備え破損してもよいようなマザーボードを使用します。私はテスト専用にPC-9821Xa7用のマザーボードを使用しています。電源を入れ、最初のハードウェアメモリーチェックが通れば一応良とします。DRAMの取付だけで、容量設定を忘れたり、DRAMの端子の短絡や非導通があった場合は、画面左上に「BASE MEMORY ERROR」などと赤文字で表示され、それ以外の部分はモザイク状態の表示となります。この場合は、改めて半田付けや容量設定を再チェックして手直しします。
 念を入れる場合は、長時間通電し、そののち再リセットしてハードウェアメモリーチェックで再確認します。もし、温度上昇による半田付け箇所の断線、短絡等があれば、ここでエラーが出ます。
 
4 その他
 実際に何枚かを製作してみて気が付いたことがあります。以下、それらを示します。
(1) エラー状態を経験する。
 メモリー容量の設定を敢えて所定値から変更したり、一部のDRAMのリード線を浮かしたりして異常状態とします。そして、そのときのコンピュータの表示を記録しておくと参考になります。コンピュータを破損せず、エラー状態を経験したいなら、SIMMを1枚だけ取り付けるとBASE MEMORY ERRORとなります。
 ほとんどの場合、赤文字のBASE MEMORY ERROR+モザイク画面かPARITY BASE MEMORY ERROR+モザイク画面となります。
エラーの例
@ BASE MEMORY ERROR(赤文字)+モザイク
 DRAMの端子半田付け非導通
A PARITY BASE MEMORY ERROR(赤文字)+モザイク
PARITYが必要な本体にPARITY無しMEMORYを使用した場合
B SIMM TYPE SET ERROR SLOT1,2(赤文字)+モザイク
 異なった容量のSIMMを組み合わせて使用した場合
C 640KB(白文字) + SIMM SET ERROR? (黄文字) + ****KB(メモリーカウント)
D 真っ暗(そのままリセットすると@の状態)
 DRAMの一部DATA出力端子半田付け非導通
 
(2) DRAMチップの良否判定用SIMMボードの製作(後日、画像を追加する予定です。)
 DRAMを増設する場合、事前にDRAMチップの一つ一つが正常かどうかを知りたくなります。そこで、16MbitDRAMのチェッカーを製作しました。DRAMの実装密度が低く、正常なSIMMのDRAMチップのうちの一つを半田こてを使って外し、代わりにICソケットを取り付けます。そして、テストしたいDRAMをソケットに挿入し、実際にコンピュータで使用することにより判定します。
 DRAMの実装密度が高いSIMMであるとICソケットが取り付けられませんので、できるだけ実装密度の低いものを選びます。お勧めは、両面に4個ずつ計8個の16MbitDRAMチップを実装した16MBのSIMMが良いでしょう。どうしても実装密度の高いSIMMしか手に入らないときは、代わりにSIMMソケットを実装したとき他のSIMMや部品に支障しない位置のDRAMを端から2個分外し、一番端にICソケットを取り付けます。また、端から2個目の部分は何も取り付けないでおきます。そして、端から2個目と同じアドレスバスに接続されるDRAMチップを探し、その上に先程外したDRAMを重ねて載せ、アドレスのリード線は上下同士、データ端子のリード線は本来のプリント板パターンに半田付けで接続します。
 ICソケットを取付後、試験したいDRAMチップを挿入し、コンピュータ起動時のハードウェアチェックを利用して検査します。
 ICソケットからDRAMを抜くのに専用の引き抜き工具が必要となりますが、0.5mm程度のピアノ線を曲げて代用することができます。ピアノ線の両端を0.5mmずつ直角に曲げるとともに、全体をUの字形に曲げて使用します。

(3) トラブル事例1
 BASE MEMORY ERROR
 DRAMの一部PIN半田付け未了が原因であることが多い。半田付けにより対処

(4) トラブル事例2
 BASE MEMORY ERROR,SIMM TYPE SET ERROR FOR SLOT1,2
電源のバイパスコンデンサ容量不足? 

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